サイファイ・カフェSHEの趣旨



医学・生命科学の研究を終え、2007年からパリ大学で科学哲学を学びながら科学という営み、自らの研究活動、そして日本を取り巻く状況について考える中で、一つの大きな問題に気付くことになりました。

それは、科学という人類の営みを支えきた精神活動 (科学精神と言うべきもの) に対する理解が充分になされていないのではないかという点でした。目に見えるものの背後にあり、立ち止まり、意識しなければ人間の目にはなかなか届かないものを理解しようとする視点の欠如にも繋がるものです。

そして、その欠如は科学に留まらず、日本のあらゆる分野に共通に見られる特徴ではないかと考えるようになりました。それを一言で言えば、ものごとの根源に還り、大きな枠組みの中に入れ直して考えるという哲学的態度の欠如になるのではないでしょうか。そのために、わたしたちは随分と不利益を被ってきたように見えます。

このような認識の下、科学という営みを哲学や歴史などの視点から見直し、そこで得られた考え方をどのようにわたしたちの生活に取り入れていくのか、そして最終的には人間とは?という究極の問題について共に考える場を設けることにしました。

具体的には、体系的なメニューを 「勉強」 するのではなく、講師の私的なプリズムを通して観た世界、謂わば体を伴った主観的な世界を提示しながら進むというやり方を採ります。その際、提示された世界から拡がるイメージを各自が中に取り込み、考え、観想する過程で化学反応が起こることを願っています。その反応は現場で起こることがあるかもしれません。あるいは、終了後に配布される使用スライドを反芻する中から生まれることもあるかもしれません。そして、このような試みを継続することにより、一つの大きな像が結ばれ、それを観ることで各自が変容することになれば素晴らしいと考えています。それは変容することこそ生きることを意味しているとも言えるからです。

このような趣旨にご理解をいただき、この試みにお気軽に参加していただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


(2011年8月16日; 11月27日改訂)



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