プロジェクト 2016-2017





ISHEプロジェクト2016-2017を振り返る


1)   科学と哲学の普及と語り合い

a) 「医学のあゆみ」エッセイ、およびSHEPAWLの活動を軸に進める 


 ● 雑誌「医学のあゆみ」のエッセイ・シリーズ『パリから見えるこの世界』については、2017年12月現在63回の発表が終わっている。人間で言えば、還暦を迎えたということになる。 具体的なテーマは、以下の通りである。

40) デフォルト・モード・ネットワーク、あるいはぼんやりすることの意味 (2016.1.9
41) 哲学的感情、あるいは世界の全体をどこに見るのか (2016.2.13
42) 「姿ハ似セガタク、意ハ似セ易シ」、あるいは科学の言葉 (2016.3.12
43) ピエール・アドー、あるいは「哲学への改宗」 (2016.4.9
44) 外国語との付き合い、あるいはなぜ外国語を学ぶのか? (2016.5.14
45) 作るのではなく、生まれいずるのを待つ、そしてネガティブ・ケイパビリティ再び(2016.6.11
46) 「意識の第三層」、あるいはパスカルの「気晴らし」 (2016.7.9
47) ドーバー海峡が分けるもの、あるいは分析哲学と大陸哲学 (2016.8.20
48) オーギュスト・コントの人類教、あるいは「科学の形而上学化」の精神 (2016.9.10
49) スートゥナンス、そして学生であるということ (2016.10.8
50) 新しい町トゥールで始まる研究生活、そして広がり繋がる空間 (2016.11.12
51) ディオゲネス、あるいは「率直に語る」ということ (2016.12.10
52) 文化としての科学、あるいは「科学の形而上学化」の実践 (2017.1.14
53) トルストイの生命論、科学批判、人生観、そしてメチニコフ再び (2017.2.11
54) 植物という存在、あるいは観るということ (2017.3.11
55) オーガニズム、あるいは「あなたの見方を変えなければなりません」 (2017.4.8
56) 「自己の中の他者」、あるいは自由人葛飾北斎とルネサンスマン平田篤胤 (2017.5.13
57) 現代フランスにおける「生の哲学」、そして哲学すべき状況とは? (2017.6.10
58) 文明と文化、そしてそこから見える科学 (2017.7.8
59) エピクテトスとマルクス・アウレリウス、そして現代に生きるストア哲学 (2017.8.19
60) 瞑想とフランス生活、そしてその効果を想像する (2017.9.9
61) マルセル・コンシュ、あるいは哲学者の生活 (2017.10.14
62) 絶対的真理への道、その第一歩はあらゆる生の経験を意識することか(2017.11.11
(63) エルンスト・ヘッケル、あるいは一元論的知、倫理、美の探究(2017.12.9)


● サイファイ・カフェSHE、サイファイ・カフェSHE札幌、カフェフィロPAWLはそれぞれ年2回開催した。具体的には、以下の活動を行った。

サイファイ・カフェSHE

9回 2016310日(木)、11日(金)「科学と宗教:オーギュスト・コントの場合」
10回 20161117日(木)、18日(金)「植物という存在を考える」
11回 2017616日(金)「エルンスト・ヘッケルの科学と人生」
12回 20171027日(金)「ミニマル・コグニションを考える」

サイファイ・カフェSHE札幌

第1回 201632日 (水) 「科学にとっての哲学、哲学にとっての科学」
2回 2016118日(火) 「遺伝子ができること、できないこと」
3回 201763日(土) 「病気が治るとはどういうことか」
4回 2017106日(金) 「あるべき内的生活を考える」

カフェフィロPAWL

3回 201638日(水)「エピクテトスの人生と哲学」
4回 20161111日(金)「アリストテレスが考えた善き人生」
5回 201769日(金)「ソクラテスの死が意味するもの」
6回 20171021日(金)「プラトンの『パイドン』を読む」


パリカフェの立ち上げ

これは当初の計画にはなかったが、パリにおいてもサイファイ・カフェSHE(略称:パリカフェ)を開催することにした。

1回 201792日(土)「科学と哲学の関係を考える」


b) 「サイファイ・フォーラムFPSS」の立ち上げ

科学者を中心にして、哲学者や一般市民が科学について多方面から議論する場として、このフォーラムを立ち上げることになった。幸い30名以上の賛同者を得て、第1回会議が2017610日(土)に日仏会館で開催された。この会では「これからの方向性について」検討され、当面の間、賛同者が提供する話題について議論することになった。

その方針を受け、第2回会合が20171028日(土)に同じく日仏会館で「第1回サイファイ・フォーラム討論会」と銘打って開かれた。4名の方が提供された話題について活発な議論が展開された。


c) 「ベルクソン・カフェ」の立ち上げ

フランス語を読み、哲学する場を立ち上げ、2回(それぞれ2日)開催することができた。

1回 2017624日(土)、71日(土)
Pierre Hadot « La philosophie comme manière de vivre » 「生き方としての哲学」、Exercices spirituels et philosophie antique (Albin Michel, 2002) pp. 289-304

2回 20171014日(土)、21日(土)
Pierre Hadot « Apprendre à vivre » 「生きることを学ぶ」、Exercices spirituels et philosophie antique (Albin Michel, 2002) pp. 19-38


2) 科学の哲学的研究  

今年のプロジェクトとして、(a) 「科学の形而上学化」の理論化と (b) 「免疫」という概念の形而上学的解析を挙げた。後者は、一つの著作『免疫の形而上学』(仮題)とするべく考えを纏め始めたところである。前者はその前段として重要になるため、この著作の1章として理論化することにした。このプロジェクトは来年の完成を目指している。

上のプロジェクトを進める過程で、神経系による認識機構が進化のどのレベルで現れるのか、あるいは最小限の認識機構はどこまで含めるべきなのかという「ミニマル・コグニション」が問題にされていることを知った。この問題に対して、免疫学での成果を基に新たな仮説を立てることができたので、論文として纏めているところである。


3) 「生き方としての哲学」の研究

a)  ピエール・アドー(1922-2010)の著作の研究

今年から新たに始めたベルクソン・カフェでアドー氏の『魂の鍛錬と古代哲学』(Exercices spirituels et philosophie antique, Albin Michel, 2002)にあるエッセイを読むことになった。いろいろと学ぶことが多いので、これからもこの本からテクストを選ぶというオプションが出てきた。この本を起点として、アドー氏の著作の研究を進めていきたい。

b) 生命倫理の大枠を捉え直す

今回、東京理科大学で3回の生命倫理に関する講義を依頼された。このシリーズでは、倫理、生命、生命倫理という3つのテーマについて考えてみた。この講義により、一つの枠組みが見えてきたので、今後は長期的なテーマとして研究を続けて行くことにした。


4) フランス文化の紹介

 (a) 翻訳  

   ● Le Jeu du hasard et de la complexité Odile Jacob, 2014
コレージュ・ド・フランス名誉教授でパスツール研究所元所長フィリップ・クリルスキー博士の免疫に関する最新作『偶然性と複雑性のゲーム』(仮題)(Le Jeu du hasard et de la complexité, Odile Jacob, 2014)の翻訳を昨年夏に脱稿。来年前期の刊行を目指し、現在、校正の過程にある。

La nouvelle microbiologie Odile Jacob, 2016
パスツール研究所教授パスカル・コサール博士の最新刊『新しい微生物学』(仮題)の翻訳を今年の春に脱稿。現在、校正が始まるのを待っているところである。

b) 文化講演会

これは照準が定まったプロジェクトではなかったが、来年には実現可能性が出てきた会がある。これからその計画の実現に向けて、関係者と協力しながら詰めていきたい。



(2017年12月9日)






ISHEプロジェクト2016-2017

今年から研究所のミッションに合わせて、プロジェクトを始めることにいたしました。
(2016年1月10日) 


1) 科学と哲学の普及と語り合い
   
a) 「医学のあゆみ」エッセイ、およびSHEPAWLの活動を軸に進める

b) 「サイファイ・フォーラムFPSS」の立ち上げ

科学者を中心にして科学を哲学する場を確立し、科学の側から科学を文化にする一助とする。「科学の形而上学化」の実践の一つになる。

c) フランス語を読み、哲学する「ベルクソン・カフェ」の立ち上げ
 
フランス語で書かれた文章を読みながら、哲学を学び、哲学するカフェを開店する。フランス語を読むことにより得られる霊感を大切にしながら、われわれの哲学を豊かにする場とする。

2) 科学の哲学的研究

a) 「科学の形而上学化」の理論化
以下のエッセイでスケッチされたこの概念についての考察を深め、一つの纏まりとすることを目指す。この過程は科学を文化にする上で必須になると考えているので、その理論化は実践の基礎になるはずである。

矢倉英隆: パリから見えるこの世界 « Un regard de Paris sur ce monde » 1321 世紀の科学,あるいは新しい「知のエティック」. 医学のあゆみ 244 (6): 572-576, 2013 

矢倉英隆: パリから見えるこの世界 « Un regard de Paris sur ce monde » 32国境の町リールで、「科学の形而上学化」について再考する. 医学のあゆみ 250 (11): 1063-1068, 2014  

矢倉英隆: パリから見えるこの世界 « Un regard de Paris sur ce monde » 48) オーギュスト・コントの人類教、あるいは「科学の形而上学化」の精神. 医学のあゆみ 25811: 1085-1089, 2016 

矢倉英隆: パリから見えるこの世界 « Un regard de Paris sur ce monde » 52) 文化としての科学、あるいは「科学の形而上学化」の実践. 医学のあゆみ 260 (2): 187-191, 2017

b) 「免疫」という概念の形而上学的解析
テーズにおいて展開された思索をさらに具体化すると同時に、さらに深化させ、できるだけ包括的な概念へと高めることを目指す。   

3) 「生き方としての哲学」の研究

a) 「生き方としての哲学」の系譜の研究
「生き方としての哲学」を語るカフェフィロPAWL活動とともに行う

bピエール・アドー1922-2010)の著作の研究
ピエール・アドー氏は、哲学が持つ「生き方としての哲学」の側面を現代に蘇らせた古代哲学の専門家で、わたしが哲学に入ることを促す言葉を残していた方でもある。

矢倉英隆: パリから見えるこの世界 « Un regard de Paris sur ce monde » 43) ピエール・アドー、あるいは「哲学への改宗」. 医学のあゆみ 257 (2): 193-197, 2016 

c) 生命倫理の大枠を捉え直す
生命倫理を現在行われているように見える事務処理的なやり方ではなく、生命を取り巻く問題についての哲学という視点から捉え直す。それは必然的に人間の生き方を問うことになるはずである。

4) フランス文化の紹介

a) 翻訳 

        Le Jeu du hasard et de la complexité Odile Jacob, 2014 
コレージュ・ド・フランス名誉教授でパスツール研究所元所長フィリップ・クリルスキー 博士の免疫に関する最新作 『偶然性と複雑性のゲーム』(仮題)の翻訳を試みる。2016年夏までの終了を目指す。 

 La nouvelle microbiologie Odile Jacob, 2016
パスツール研究所教授パスカル・コサール博士の最新刊『新しい微生物学』(仮題)の翻訳を2017年夏を目途に試みる。

b) 文化講演会
これは長いスパンでの計画になるが、フランスの科学者を交えた一般向けの会のような機会の設定に関わることを模索する。科学を文化にする上で必須になる哲学的視点を入れた思索を刺激するような空間が広がることを願ってのことである。